【公演レポート】法村友井バレエ団「海賊」(2019.10.27)

3度目の挑戦で2013年以来の6年ぶりの再演である。

「海賊」「奴隷」といった重いテーマを扱う作品であるにもかかわらず、どのシーンを切り取っても煌びやかな絵本の1ページをめくるような、華やかで眩い舞台風景が記憶に残る。登場人物の演技動作の緻密さ、技術と表現において申し分なく、演者の力によって作品の完成度が大いに高まった。舞台美術の壮大さ、国境を越えて物語が進んでいくスケールの大きな演目を過不足なくまとめ、同バレエ団の代表作といえる作品になったのではないだろうか。

©Fumio Obana (OfficeObana)


メドーラの春木友里沙はまだ蕾が開いたばかりの若手である。これまでも作品の主役を務めていたが、メドーラ役は初挑戦であった。「海賊」はグラン・パ・ド・ドゥとしてガラコンサートで踊られる人気のある演目であるが、しかしながら全幕での上演は国内では珍しく、登場人物の内面、人柄、役柄を理解しようにも現存する資料が他演目に比べて多くはない。そのような現状ではあるが、春木は指導者と共に「若く愛らしく、そして強い」メドーラという人物像を作り上げた。それはとても思慮深く、1幕では幼く愛に憧れるという少女、第2幕恋人コンラッドとの愛のパ・ド・ドゥでは女性としての喜び、終幕では裏切り者のビルバントを女性という立場でありながら追い詰める、という女の強さをも表現した。

©Fumio Obana (OfficeObana)


長身で舞台に映える今康康典はメドーラを包み込む優しさを兼ね備えたコンラッドを演じた。今村はコンラッド役に「海賊」としての気性の激しさ、しかしながら恋人に頼まれると嫌とは言えない人間味のある人物像を込めた。対照的に粗っぽさをドミトリー・プィハチョフがビルバント役が表現。海賊のイメージそのままの荒々しい所作に、今もなお人が恐れを抱く海賊の姿が重なる。その両者を西岡憲吾が忠臣深いアリとして調和させるというバランスの取れた配役であった。

©Fumio Obana (OfficeObana)


この度の海賊では主役の二人だけでなく舞台にのる誰しもが自身の役柄を深く掘り下げ、理解し、表現するという点に重きが置かれた。それはこの作品が演劇的要素を多く含むからである。言葉ではなく身体をもって喜怒哀楽を表現し物語を紡ぐ、という古典バレエの特徴を改めてこの作品を通して見直し、その面白さを再確認した。


©Fumio Obana (OfficeObana)


【主な配役】

メドーラ:春木友里沙

コンラッド:今村康典

グリナーラ:神木遥

アリ:西岡憲吾

ランケデム:今井大輔

ビルバント:ドミトリー・プィハチョフ

セイヤード・パシャ:井口雅之


【公演概要】

日程:2019年10月27日 18:00開演

会場:フェスティバルホール(大阪)

芸術監督・演出:法村牧緒

原振付:ヴァジム・シローチン

振付:法村圭緒

指揮:江原功

演奏:大阪交響楽団

舞台監督:藤森秀彦

舞台美術デザイン:アンナ・コトロワ

主催:一般社団法人 法村友井バレエ団

助成:文化庁文化芸術振興費補助金、独立行政法人日本芸術文化振興会

後援:公益財団法人 日本バレエ協会、FM COCOLO 765

協力:フェスティバルホール


【バレエ団情報】

〒543-0052大阪府大阪市天王寺区大道2丁目5-9

TEL 06-6771-6475  

URL:http://www.homuratomoi.com/


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