【公演レポート】環バレエ団・環ジュニアバレエ団 創立55周年記念公演

創立55周年を迎えた環バレエ団、環ジュニアバレエ団が「創立55周年記念公演」として8月17日に大阪メルパルクホールにてバレエ公演を行った

「ライモンダ」©テス大阪

同バレエ団の歴史は1963年に同バレエ団団長の環佐希子がフランス、パリへの留学した後、大阪市を活動の本拠地としたところから始まる。帰国後より、環はパリ留学の経験を活かしクラシック・バレエ、モダン・ダンスまたスペイン舞踊の要素を活かした作品を多数創作している。日本のバレエ団としては珍しいことにスペイン舞踊を普段のバレエ団のレッスンに、今もなお取り入れているという。また近年はコンテンポラリー・ダンスの作品も外部の振付家に依頼し、ほぼ毎回の公演で作品を発表している。この度の記念公演では、様々な踊りのメソッドを団員が踊れる、という強みを生かした作品がプログラムに並び、目にも鮮やかな衣装と快活な音楽にのせて踊るダンサーの姿が舞台上で見られた。印象に残った作品を挙げたい。


 第Ⅱ部ではロシアの民話をもとに深川秀夫が改訂振付を施した「火の鳥」が披露された。この作品はディアギレフのバレエ・リュスによる原版、また鬼才、振付家モーリス・ベジャール率いる20世紀バレエ団が発表した、男性舞踊者のみで踊られる「火の鳥」がよく知られている。深川版としてはロシア民話の原作の流れを大切に追いながら、ストラヴィンスキーの胸が高鳴る音楽を引きたてた作風に仕上がった。原版ではロシアの森の中にさ迷い込んだと思わせる派手な舞台美術が印象的であるが、深川版ではシンプルでありながら、しかしどこか異国情緒を感じさせる舞台美術が脳裏に残る。火の鳥役は米田くるみ、イワン役は河島真之、またツェラヴィーナ姫を池田由希子が演じた。

「火の鳥」改訂振付:深川秀夫 ©テス大阪 


 第Ⅲ幕では若きダンサー十川大介が創作、自身も演じるという「completed(not)」が意表を突いた演出で素晴らしかった。十川と、共に踊ったジョアンナ・レイノー(Johanna Raynaud)は共に現在、ドイツの都市シュヴェリーンに所在する劇場に所属している。ドイツの地方都市では独自の現代作品をレパートリーに持つバレエ団が多い印象を持つが、「completed(not)」もその影響を受けているようだ。電気スタンドを舞台上に4つ設置し、それを移動させたりしながら二人のダンサーが現代曲に合わせて踊る。その様は、若者が薄暗いリビングで日々の満たされない悩みを語り合うようなアンニュイな雰囲気があった。

 「completed(not)」振付:十川大介 ©テス大阪


「希 ~光の賛歌~」は振付がシンプルな作品であるが、目を引く作品である。スペイン風の衣装に身を包むダンサー達はこのバレエ団の55年という時間の流れを象徴するかように、様々な個性と存在感を舞台上で放つ。踊るダンサーの人間性と色気を感じさせる作品であった。

 このダンサーの個々の力こそが、長く環の創作意欲を支え、そして今もなお創作に向かわせる原動力なのではないだろうか。

「希 ~光の賛歌」振付:環佐希子 ©テス大阪

【バレエ団情報】

530-0035 大阪府大阪市北区同心2丁目13-1 環ビル

TEL 06-6358-0555  FAX 06-6352-1811

URL:http://tamaki-ballet.com/

【公演情報】

公演日:2019年8月17日(土)

会場:大阪メルパルクホール

構成・演出・振付:環佐希子

舞台監督:藤森秀彦(有限会社ウォーターマインド)

照明:横見瀬龍介(L.S.P)

音響:敷田秀樹、林亜紀子(ミクサージュ)

装置:日本ステージ


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