【公演レポート】Contemporary Dance Pieces

兵庫県芦屋市による文化プロデューサー育成事業、令和元年度「夢ステージ」にてコンテンポラリー・ダンスの公演がルナホールにて行われた。芦屋市出身の振付家、苫野美亜がプロデュースするこの企画では、見る側にとって多様な印象を残す苫野の作品が10演目上演された。 

「The One True Light」©植村耕司

 

 芦屋の自然にインスピレーションを受けたという作品「In the Middle of Bridge」では舞台奥に下ろされたスクリーンに芦屋の自然や街並みを映し出し、ダンサーはその前で踊るというユニークな作風だ。作品に物語はないが、都会から逃げだし自然の中で自身を解放させるダンサーの動き、また映像の中の幻影であるダンサーと舞台上に実在するその人の、不思議な対話にも目を奪われた。
  

「In The Middle Of The Bridge」©植村耕司

出演:横山翼 

 

 人はいつから本音と建前を使い分けるのだろうか、という振付家の小さな疑問から生まれた作品「Untitled(Figures)」では12名のダンサーが混じり合い一つの塊になりながらも、それぞれの個性を表現する。いくら建前という仮面で本音を隠しても、その人自身はしみじみと空気となって溢れ出すものだ、という作者の想いが聞こえてきた。

「Untitled (Figures)」 ©植村耕司


 踊るダンサーの吐息とドラムのリズムで躍動感を表現したのは「THE CAVE」。バレエダンサーの鍛錬された美しい身体を飾るシンプルな衣装が、振付の俊敏さとよく合う。舞台の中央奥に置かれたドラムのリズムが速くなるにつれ、ダンサーの動きも速まる。演奏者と13名のダンサーが作り出した熱は、まるでライブハウスにいるかのような臨場感と鼓動、興奮を客席に届けた。

「THE CAVE」©植村耕司

 

  舞台作品には明確で確固たる方向、客席にテーマを伝える伝達、表現者との共有、という作業が必要である。そして創作段階では見る者の目を意識することも必要である。それらを感じさせない作品は創り手の自己満足で終わる危険性があるではないだろうか。
 この度、上演された苫野の作品それぞれにテーマとメッセージ、それを効果的に伝えるための工夫があった。受け手によって捉え方や感じ方が異なるコンテンポラリー・ダンス。その魅力の深さを広く十二分に伝えたい、という苫野の挑戦はまだ始まったばかりだ。
 


【出演】

 芦屋大学バレエコース在学生・卒業生、鮫島バレエスクール、竹内みさよバレエアカデミー、永井エコール・ド・バレエ、山口けい子バレエスクール、ヤマダバレエスタジオ 


【公演概要】

 公演名:令和元年度 芦屋夢ステージ 

    苫野美亜プロデュースDance Performance LIVE#6  

    Contemporary Dance Pieces 

日程:2020年2月15日 17:30開演 

会場:芦屋市民センター ルナ・ホール

企画・制作・プロデュース:苫野美亜 

主催:芦屋市、芦屋市教育委員会、

   Dance Performance LIVE制作委員会 

後援:コシノヒロコ(ファッションデザイナー)
   

   公益財団法人 兵庫県芸術文化協会 

助成:公益財団法人 ブルボン吉田記念財団 

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