【公演レポート】DANCE at the GATHERING 2018

若手のバレエ・ダンサーの登竜門として名高い「ローザンヌ国際バレエコンクール」に縁のあるダンサーが一堂に会し、各々の個性を十分に発揮したガラ・コンサート公演であった。

 バレエ作品で印象に残ったのは「エスメラルダ第2幕より、ダイアナとアクティオンのグランパ・ド・ドゥ」を踊った中島麻美と大巻雄也のペア。互いに華やかなバレエ・テクニックを競い合うように披露した。双方共に2011年よりスロヴェニア共和国の北東部の都市、マリボルの国立歌劇場(Slovenia National Theater Maribor)に勤務し、2016年に行われた第27回ヴァルナ国際バレエコンクール・シニア部門ではそれぞれ3位に入賞している。長くペアを組んでいる二人の踊りは安定感を感じた。

 パリ・オペラ座バレエ団所属のオニール八菜とマーク・モローの二人は「ドン・キホーテよりグランパ・ド・ドゥ」でオペラ座のエレガントなダンス・スタイルを披露。日本を代表するデパート伊勢丹のポスターを飾り、バレエファン以外も魅了し続けているオニール八菜なので、彼女の踊りを一目見ようと劇場に詰め掛けたファンも多かっただろう。マーク・モローとの演技はポール・ド・ブラや上半身の動きが洗練されており、テクニックに走りがちの日本のバレエ・ダンサーに「バレエは技術だけを魅せる芸術ではない」というメッセージを投げかけているようだった。

 華やかで美しいバレエ作品がプログラムに並ぶ中で異彩を放っていたのが『In the blink of an eye』(振付:島﨑徹)。緞帳が開いたその瞬間に、観客の興味が一様に舞台に注がれるのを感じた。照明を抑え、ドライアイスが煙草の煙を想像させる空間に都会的の排他的な雰囲気を漂わせる舞台空間。コンテンポラリー作品を制作するうえで、雰囲気作りは作品の出来に大きな影響を与えるが、この舞台設定によってそれまでの象徴美のバレエの華やかな世界から、一気に観客をコンテンポラリー・ダンスの世界に引込んだ。12名のダンサーは振付家のスタイルをしっかりと体に入れ込んでいるので、ダンサーの真直ぐなエネルギーが客席に伝わる。躍りの端々から感じる雄弁な振付に、若者の衝動性、愛情、葛藤などの想いが溢れた。

 制作者の想い熱く様々な演目が楽しめる公演ではあったが、公演の終了時間が遅く、また公演時間が4時間近くと長かったため、終演を待たずに席を立った観客が目立ったのはとても残念だった。蛇足かもしれないが、一点、書き添えておきたい。

※筆者は大阪公演を鑑賞


【公演情報】

日時:2018年7月18日(東京)、7月20日(大阪)

会場:メルパルクホール東京(東京)、NHK大阪ホール(大阪)

プロデューサー:西尾智子(ダンスウエスト)

主催:ダンスウエスト/サンライズプロモーション東京


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