大森一樹さん/ヴァルナコンクール2018銅賞

世界3大コンクールのうちの一つで、ブルガリア・ヴァルナにて隔年で開催される「ヴァルナ国際コンクール」。現在、ポルトガルのリスボン国立コンセルバトワール・ダンス・スクールの最終学年に在籍し、2018年の同コンクール、ジュニア男性部門の銀賞に輝いた大森一樹さんにコンクールの様子を伺った。

-銅賞受賞、おめでとうございます。早速ですが、コンクールの印象をお聞かせください。

大森「まずお客さんの反応が日本のコンクールとは全然違いました。良い意味でも悪い意味でも観客からの反応を肌で感じられることは大きな違いだと思います。またコンクール事務局がダンサーを大切にしようという意思が感じられました。例えば日本では予選、決戦と勝ち残っていくたびに、参加者は審査料を支払います。ですがヴァルナコンクールでは審査を勝ち進んでいくたびに、僅かにはなりますが手当(報酬)が頂けました。」


ーそれは大きな違いですね。ヴァルナコンクールの開催より約一か月の月日が経ちました。このコンクールの受賞が今後どのような変化をもたらすと思われますか。

大森「プロダンサーとしてのキャリアを築くうえで大きいのではないかな、と思います。来年夏にバレエ学校を卒業する予定ですが、就職のためのオーディションの際に役立ってくれる事を願っています。」

ーコンクールは日没後に野外で行われますが、リハーサルは大変でしたか。

大森「正直なところ、体力的にきつかったです。リハーサルは前日の夜と本番の昼にもありましたが、少しの雨が原因でコンクールがスケジュール通りにいかなかったり、舞台の上に虫の死骸があったり、と驚くことも多少ありました。ですが、やはり野外舞台で踊るということは解放感に満ちていました。」


ー同コンクールに出場の場合、例えばソロで出場の場合の上演演目は多い人で6曲ありますが、大森さんはどのようにご準備なさいましたか?

大森「実はバレエ学校の授業が忙しく、コンクールのためのリハーサルに十分時間を取れなかったのです。ですので、コンクールで踊る演目はそれまでも踊ったことのあるものを選びました。コンテンポラリー・ダンスの演目は学校の先生に毎日ついて頂いてリハーサル出来ましたが、クラシック・バレエのリハーサルはほぼ自習のようなかたちでした。」


ーコンクールの準備には時間のかかるものですが、ご自分でリハーサルをしてコンクールに挑むという事はかなりの度胸と勇気が必要だと思います。入賞の勝算は、ずばりありましたか。

大森「実はありませんでした。今回は男性ジュニア部門の決選に残ったのが5名でした。入賞の1位から3位までの事を考えると、少なくとも2名は入賞できない計算になります。自分の踊りの出来を考えるとギリギリで厳しいのではないかな、と思っていました。ですので、自分の名前が呼ばれたときは正直に心から嬉しかったです。」

ー今後の抱負は何ですか。

大森「卒業年になる今年、一年以内に就職を決めたいと思っています。出来ればヨーロッパ圏内で、クラシック・バレエとコンテンポラリー・ダンスの両方をレパートリーに持っているバレエ団で働きたいと思っています。」

 コンクールの入賞がキャリアを築くうえで有効だという事は確かだ。だが輝かしいキャリアを確実に築く保証になるかというと、その保障は実は無い。将来有望なダンサーである大森一樹さんが、このコンクールでの受賞を足掛かりに今後どのように活躍していくのか、注目が集まる。

※記事中の写真は全て大森さん提供

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